【必ず理解できる】保険料控除とは?控除の対象や申請方法を解説

「保険料控除ってなに?やる意味あるの?」
「控除の申告方法ってどうやるの?」

今回はこういった疑問をお持ちの方に向けて保険料控除の仕組みや控除対象、申告方法などを誰でも分かりやすく簡単に説明していきます。

税金についてあまり触れてこなかった人にとっては、「保険料控除」というのは聞きなれない言葉で身構えてしまうかもしれません。ですが、内容としては意外と単純です。

また、保険料控除は毎年行うもの。しっかり覚えておかないと毎年損をしてしまう事になります。ですので、これを機に保険料控除の内容を理解して有効に活用してください。

保険料控除とは?

まずはじめに、保険料控除とは何なのかを説明していきます。一言で言うと、保険料控除とは「1年間に支払った保険料の合計を計算して、その保険料に応じて所得から一定の金額を引くことができるという制度」です。

つまりはどういうことなのか、これだけでは分からない人も多いと思いますので、ここからわかりやすく解説していきます。

保険料控除の仕組み

「控除」というのは「金額を差し引く」という意味で、控除には保険料控除の他に医療費控除や配偶者控除、扶養控除など様々な種類が存在しています。

私たちが毎年支払っている税金(税額)は、1年間の「所得」を元に算出されます。しかし、今挙げたような様々な控除がある場合は、それらを差し引いた「課税所得」から税金が計算されるのです。

わかりやすく計算式にすると

「所得」-「控除」=「課税所得」
「課税所得」×「税率」=「税額」

となります。

つまり、控除が多ければ多いほど課税所得が減り、支払う税金が少なくなるという事です。

ですから、保険料控除とは「1年間に支払った保険料に応じて所得から金額を差し引くことが出来るため、課税所得が減り、支払う税金が少なくなる制度」ということになります。

ですが、保険料控除は自分で申請しなければなりません。もし対象であるなら申請しなければ、余分に税金を支払ってしまい、損をしてしまいます。

保険料控除の対象

では保険料控除にはどういった方ができるのか説明していきます。

保険料控除には主に「生命保険料控除」「地震保険料控除」「社会保険料控除」「小規模企業共済等掛金控除」の4つがあります。

保険料控除の種類 対象者
生命保険料控除 主に生命保険や個人年金保険等に入っている人
地震保険料控除 火災保険に地震保険特約をつけている人
社会保険料控除 勤務先の給料から健康保険料や厚生年金保険料などが差し引かれておらず、自分で支払っている人
小規模企業共済等掛金控除 主に個人型年金加入者掛金や心身障害者扶養共済制度の掛金を勤務先の給料から差し引かれておらず、自分で支払っている人
個人型年金加入者掛金とは
iDeCo(イデコ)とも言われるもので、毎月一定額を積み立て、金融商品を自ら運用することによって、60歳以降に年金や一時金という形でお金を受け取ることができる年金制度
心身障害者扶養共済制度とは
毎月一定額を納めることで、障害がある人を扶養している保護者が死亡や重度障害になったときに、障害のある方に終身一定額の年金を支給する制度

この4つの中で「生命保険料控除」と「地震保険料控除」は当てはまる方が多いと思われるため、またのちほど詳しく解説します。

控除はやるべき?

前述の通り、控除を行うことによって税金の支払いを少なくでき、生活にゆとりが生まれます。そのため、控除の対象であれば必ず申告するようにしましょう。

例として年収500万円(給与所得控除額は154万円)、社会保険料80万円、生命保険料控除が12万円の場合で所得税を計算してみましょう。

保険料控除を行った場合は、

  • 500万(給与収入)-154万円(給与所得控除)=346万円(総所得)
  • 346万円-80万円(社会保険料)-12万円(生命保険料控除)-38万円(基礎控除)=216万円(課税総所得)
  • 216万円×10%(税率)=216,000円(所得税)

というようになり、所得税額は216,000円となります。

もし生命保険料控除をしていないと、

  • 500万(給与収入)-154万円(給与所得控除)=346万円(総所得)
  • 346万円-80万円(社会保険料)-38万円(基礎控除)=228万円(課税総所得)
  • 228万円×10%(税率)=228,000円(所得税)

このようになり、所得税は228,000円です。

つまり、保険料控除をすれば228,000円-216,000円=12,000円がお得になるということです。さらに、これに加えて住民税も安くできますので、このケースの場合実質2万円以上は税金を安くできます。

計算方法は難しく感じるかもしれませんが、申請は簡単で誰でも出来ますので、難しく考えなくても大丈夫です。

記事の後半に、保険料控除の申告方法も記載していますので、是非参考にしてください。

生命保険料控除

保険料控除には4つあるという説明はしましたが、そのなかでも一番当てはまる人が多い「生命保険料控除」についてここからは説明していきます。

生命保険料控除は「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3つに区分されており、それぞれ対象や控除額が異なります。

また、生命保険料控除には「新制度」と「旧制度」があり、平成23年12月31日までに契約した保険は「旧制度」の対象となるため注意が必要です。

どんな人が控除できる?

ではどういった方が当てはまるのか3つの区分ごとにそれぞれ説明していきます。

控除の種類 対象の保険 条件
一般生命保険料控除 終身保険
定期保険
養老保険
保険金を受け取る人が契約者、またはその配偶者、その他の親族
介護医療保険料控除 介護保険
医療保険
がん保険
保険金を受け取る人が契約者、またはその配偶者、その他の親族
また、平成24年1月1日以降に契約した保険のみ
個人年金保険料控除 個人年金保険 年金を受け取る人が契約者、またはその配偶者
また、保険料払込期間が10年以上

「一般生命保険料控除」は、生存または死亡することにより、一定額の保険金が支払われる保険を契約している人が対象で終身保険、定期保険、養老保険がこれに該当します。そして保険金を受け取る人が契約者、あるいはその配偶者、その他の親族であることが条件となっています。

「介護医療保険料控除」は、病気や怪我による入院もしくは通院をすることにより、一定額の給付金が支払われる保険を契約している人が対象で介護保険、医療保険、がん保険がこれに該当します。

介護医療保険料控除は一般生命保険料控除と同じで、保険金を受け取る人が契約者、あるいはその配偶者、その他の親族であることが条件となっています。また旧制度では、介護医療保険料控除は存在しないため平成24年1月1日以降に契約した保険のみが対象です。

「個人年金保険料控除」は税制適格特約を付けた個人年金保険を契約している人が対象で、年金を受け取る人が契約者またはその配偶者であることや、保険料払込期間が10年以上であること等が条件となっています。

税制適格特約とは
個人年金保険に付加するもので、様々な条件や制限が付くかわりに個人年金保険料控除を受けられるようになる特約

生命保険料の控除額

生命保険料の控除額はこちらの計算式によって求められます。

所得税
年間保険料 控除額
20,000円以下 保険料全額
20,001~40,000円 (保険料×1/2)+10,000円
40,001~80,000円 (保険料×1/4)+20,000円
80,001円以上 一律40,000円
住民税
年間保険料 控除額
12,000円以下 保険料全額
12,001~32,000円 (保険料×1/2)+6,000円
32,001~56,000円 (保険料×1/4)+14,000円
56,001円以上 一律28,000円

「一般生命保険料控除」「介護医療保険料控除」「個人年金保険料控除」の3つともこの計算式によって求めることが出来ます。

例として1年間で

  • 一般生命保険料を10万円
  • 介護医療保険料を6万円
  • 個人年金保険料を2万円

を支払ったとしましょう。

これを計算すると、まず一般生命保険料は年間保険料が10万円ですので、所得税は40,000円、住民税は28,000円が控除されます。

続いて介護医療保険料は、年間保険料が6万円ですので、所得税の控除額の計算は(60000×1/4)+20000=35,000円となります。そして住民税の控除額は、28,000円となります。

最後に、個人年金保険料は、年間保険料が2万円ですので、所得税の控除は20,000円以下に該当するため保険料全額、つまり20,000円となります。そして住民税の控除は、(20000×1/2)+6000=16000円となります。

したがって、合計すると所得税の控除額は40000+35000+20000=95,000円、住民税の控除額は28000+28000+16000=72,000円となります。

旧制度と新制度の違い

前述したように生命保険料控除には旧制度と新制度があり、平成23年12月31日以前に契約した保険は旧制度となります。また、介護医療保険料控除は旧制度では存在しません。

そんな旧制度と新制度の違いは、控除額の計算式です。

新制度の計算式については先ほど示した通りで、旧制度の控除額は以下の計算式で求められます。

所得税
年間保険料 控除額
25,000円以下 保険料全額
25,001~50,000円 (保険料×1/2)+12,500円
50,001~100,000円 (保険料×1/4)+25,000円
100,001円以上 一律50,000円
住民税
年間保険料 控除額
15,000円以下 保険料全額
15,001~40,000円 (保険料×1/2)+7,500円
40,001~70,000円 (保険料×1/4)+17,500円
70,001円以上 一律35,000円

地震保険料控除

ここからは地震保険料控除について説明していきます。

地震保険料控除は生命保険料控除に次いで当てはまる人が多いので、こちらもしっかり覚えておきましょう。

どんな人が控除できる?

地震保険料控除は、火災保険の地震保険特約を付けている方が対象です。

また平成18年12月31日以前に契約した、10年以上の契約期間の長期損害保険については、例外として地震保険料控除の対象にできます。

地震保険料の控除額

地震保険料の控除額は以下の計算式によって求められます。ただし、平成18年12月31日以前に契約した、長期損害保険については計算式が異なります。

所得税
  年間保険料 控除額
地震保険料 50,000円以下 保険料全額
50,001円以上 一律50,000円
18年12月31日以前に契約した
長期損害保険料
10,000円以下 保険料全額
10,001~20,000円 (保険料×1/2)+5,000円
20,001円以上 一律15,000円
住民税
  年間保険料 控除額
地震保険料 50,000円以下 保険料全額×1/2
50,001円以上 一律25,000円

18年12月31日以前に契約した
長期損害保険料

5,000円以下 保険料全額
5,001~15,000円 (保険料×1/2)+2,500円
15,001円以上 一律10,000円

保険料控除の申告方法は?

ここからは保険料控除の申告方法について解説していきます。会社員と自営業の方で申告方法が異なりますので、それぞれ説明していきます。

会社員の場合

保険料の控除を受けるにはまず「保険料控除証明書」が必要になります。「保険料控除証明書」は保険会社から10月から11月頃に毎年届けられます。

会社員の場合は、年末調整の際に会社から貰う「給与所得者の保険料控除申告書」に「保険料控除証明書」を添付し勤務先に提出することで控除を受けることができます。

会社員は、給料から所得税を納めているため、控除で所得税が安くなれば余分に払っていた分のお金を還付金として受け取ることができます。

住民税については還付金は発生しませんが、翌年の住民税が安くなります。

自営業の場合

自営業の場合も「保険料控除証明書」が必要になります。ですが会社員と違い、確定申告の際に「確定申告書」に「保険料控除証明書」を添付することで控除を受けられます。

「保険料控除証明書」は会社員と同じように10月から11月頃に届くので、確定申告まで無くさないようにしましょう。もし無くしてしまった場合は保険会社に連絡することで、再発行することができます。

まとめ

今回は保険料控除について詳しく解説していきましが、内容の方は理解できましたでしょうか?

聞いたことない単語が多かったりすると難しく考えてしまいがちですが、意外と理解してしまうと単純だと感じたのではないでしょうか?

保険料控除は対象であれば毎年行うものです。自分でやらなければならないので面倒だと思い、控除を怠ると結構な金額を損してしまいます。

今までやってこなかった方は是非とも今年から保険料控除を申請してみてください。還付金を受け取れると、かなり得した気持ちになりますよ。

保険料控除まとめ
  • 保険料控除の仕組み
    • 「所得」-「控除」=「課税所得」
    • 「課税所得」×「税率」=「税額」
  • 保険料控除をするとと税額が減る
  • 終身保険、定期保険、養老保険は一般生命保険料控除の対象
  • 介護保険、医療保険、がん保険は介護医療保険料控除の対象
  • 個人年金保険の契約者は個人年金保険料控除の対象
  • 火災保険の地震保険特約を付けている方場合は地震保険料控除の対象
  • 保険料控除の申告方法
    • 会社員は年末調整の際に申請
    • 自営業は確定申告の際に申請